#落語#アマゾン#転売無限『アマゾン偽造問答』『転売無限』

@落語#アマゾン#転売無限『アマゾン偽造問答』『転売無限』
『アマゾン偽造問答』
えー、世の中便利になったってね、そりゃたしかに便利にはなってるんですよ。昔だったら「買い物」つったらね、履物つっかけて、商店街歩いて、「おじさーん、この大根、ちょっとスが入ってない?」なんて言って、なんだかんだ駆け引きがあったわけ。
ところが今はどうだい?スマホ一つで何でも買える。ベッドで横になりながら、「昨日の味噌がなくなったな」っつってポチッとやったら、翌日には届いてる。便利だ、便利だけどね、あたしは言いたい。「便利」ってのはね、「なにかと引き換えなんだ」って。信頼とか、誠意とか、店主の親父のぶっきらぼうな愛想とか、全部どっか行っちまった。
で、そんな便利の王様みてぇなのが「アマゾン」ってやつですよ。世界中どこにいても同じ箱で届く。プライム会員になれば、下手すりゃ明日の朝にもう来てる。何者だお前はってくらい速い。アマゾンの配送だけでタイムマシンできるんじゃねぇかって話。
だけど、このアマゾンがね、ひとつとんでもない落とし穴を持ってんですよ。今日の噺はその話。
登場するのは、まず「トライアンドイー」っていう医療機器メーカー。名前からしてもう不安定。「トライして、成功するかは…イー!」みたいな。で、この会社が開発したのが「パルスオキシメーター」ってやつ。血中酸素濃度を測る機械ね。
で、もう一社、「エクセルプラン」。こっちがそのパルスオキシメーターを独占で売ってた。なんか“エクセル”って聞くと数字に強そうだけどね、これがアマゾンの数字には泣かされるんだから、世の中わからない。
さて、時は2021年。コロナ真っ盛りでしてね、このパルスオキシメーターってのがバカ売れ。うちにも一台ありましたよ。いやぁ、あたしが測るといつも数値が高くてね、安心するのよ。「オレ、まだイケるな」なんて思ってた。そしたら電池が切れてた。
で、エクセルさんはアマゾンで正規品として売ってた。お値段もそこそこ。そりゃそうだ、ちゃんとした医療機器なんだから。ところがある日、同じページに――つまりアマゾンの“相乗り出品”って仕組みのせいで、どこの馬の骨かわかんない業者が、似たようなオキシメーターを10分の1の価格で売り出した。
10分の1!?
正規品が1万だとして、そっちは1000円!?
普通だったら「こりゃおかしい」って思うじゃない。でも、アマゾンのレビューには「安い!すぐ届いた!箱が綺麗!」って。中身は!?お前ら中身は!?なんで家電じゃなくて、弁当感覚で評価してんだよ!
で、エクセルさんは気づいて、アマゾンに連絡するわけだ。「うちの製品に偽物が相乗りしてます、対策してください!」って。
そしたらアマゾン、どうしたと思います?
無視。ガン無視。既読スルー。既読すらつかない。
そりゃそうだ。連絡先、インドだかアイルランドだか知らないが、こっちの話が通じるかどうかもわからない。メール出しても、「自動応答:テンプレートをご参照ください」。ふざけんなっての!
で、やっと返事来たと思ったら、「調査します」。で、3ヶ月経っても何も起こらない。ついに、正規品のページごと削除されちゃった!
おい、話が逆だろ!
詐欺師を野放しにして、本物を追放するって、江戸時代の冤罪事件だってもう少し筋が通ってるよ!
しかもページが消えたから、再出品もできない。こちとら商品が山積み、倉庫代だけがかさむ。アマゾン倉庫って高いのよ。あれね、荷物じゃなくて夢が圧縮されてんだから。
で、とうとう訴えました、東京地裁に。
「アマゾン、てめえが偽物を止めなかったからうちは損害を被った!」って。額は2億8千万。なかなかのもんだ。
裁判所の判断はどうだったかって?
「アマゾンは、偽造品出品に対して対策を講じる義務がある」
って。出たよ。「義務」って言葉。あれはね、民事裁判における一番のパンチライン。
そして、賠償額は……3500万円。
あれ?2億8千万どこ行った?あの差額は誰が吸った?アマゾン?裁判所?それともこの国の空気か?
でもまあ、アマゾンにしてみりゃ3500万なんて「お釣りでどーぞ」って額。たぶん倉庫のどっかの隙間に入ってる。だけど、意味は大きい。法律的にはっきり、「お前んとこ、責任あるよ」って突きつけられたんだから。
ただここで一つ言いたい。
この世で一番怖いのは、「便利すぎる場所」ってやつだ。
便利ってのは、どんどん「自分で考えなくていい」を加速させる。そして最後には「文句を言う相手もいない」とこまで行っちまう。
アマゾンのレビュー、読んでみな。
「偽物でした」→「星1」
「本物でした」→「星5」
いや、それ、お前が書く前にアマゾンが判断しろよ!!
なに?AIがチェックしてる?
あたしゃAIって言葉が一番信用できない。
「あなたのご注文はAIが確認しました」って……そりゃそうか。
“AI”ってのはね、「あまりにも意味不明なイチャモン」って意味なんだよ。
……ま、そんな世の中だからさ、
買い物する時はね、目ん玉を二つ使って、クチも使って、疑うくらいでちょうどいい。
でもね、こんなこと言いながら、
今朝もあたし、アマゾンでトイレットペーパー買いました。
だって安いんだもん! 本物かどうか?――
拭いてみりゃ、わかるんですよ。
偽物は拭けども、アマゾンの責任は落ちやしねぇ――ってね。
――お後がよろしいようで。

2幕目

『転売無限』
えー、世の中には「城」ってぇもんがいろいろありまして。名城・古城・天空の城……
そのどれよりも恐ろしく、深く、出口の見えねぇのが「無限城」ってやつでございまして。
まぁ、アニメ『鬼滅の刃』に出てくる、鬼のボス・無惨様の根城でございますな。
が、今はもう、鬼よりタチの悪い連中が棲みついてる。
それが……転売ヤー。
で、この度、東京の京橋ってとこで開催されましたのが――
アニメ「鬼滅の刃」柱展 -そして無限城へ-
どのくらいの人気かってぇと、チケット発売と同時にサーバーがバンッと落ちまして、
気づきゃもう「完売しました」……どこの紅白歌合戦だって話ですよ。
で、私はこう見えてオタク歴25年。
伊之助の獣の呼吸を「現実逃避の呼吸」と置き換え、
善逸の雷の呼吸は「布団から出られない呼吸」に変換して日々を生きてきた。
そんな私が、どうしてもこの展覧会に行きたかった。
チケットを手に入れて、鼻息荒く現地へ向かったわけでございます。
ところが会場に近づくと、妙な光景が広がってる。
スーツケースがズラーッと並び、人がやたらと立ってる。
言葉がまたね、「シェイシェイ」とか「クァイディアン」とか飛び交ってんの。
あたしゃ一瞬、京橋から横浜中華街にワープしたのかと思いましたよ。
その集団、見た目は観光客っぽいんだけど、よーく見ると……
全員、同じアプリでスマホいじってる。
しかもそのアプリ、座標情報付きの転売管理システムっぽい。
もう一人ひとりが“柱”じゃなく“営業所”だね。
中には、スーツケースに「両面宿儺」みたいにアクリルスタンドを二層に詰めてる奴もいた。
鬼滅と呪術、混ざってんじゃねぇか!ってツッコミたくなる。
入場列を見張ってると、謎のブローカーみたいな男がやってきて、
「今日の枠、誰か余ってるか?」「一枚八千で買うアル」とか囁いてる。
なんだよそれ。無限列車じゃなくて、無限人買いじゃねぇか。
で、彼ら、ちゃんと中にも入ってるのよ。
どうやってかというと、複数のアカウントと偽名で予約してるって話で。
「張さん」「陳さん」「王さん」「王さん2号」「王さん3号」……
もう名字が足りねぇんじゃないかってくらい王さんだらけ。
漢王朝か!
で、買い占めたグッズは、会場の裏のカフェで袋詰め。
「おまけ付きセット」「初日限定品セット」「炭治郎兄妹セット」……
それをその場でQRコードで海外発送。
カフェのWi-Fiが地獄の釜の通信速度。
こんな光景を見たら、善逸が泣き出すね。
「俺、怖いよォ! Wi-Fi強すぎて怖いよォ!」
さらに腹立つのが、免税制度の悪用だ。
「観光客です」と言って、グッズを免税で買う。
でも実際は、日本在住。
観光どころか、目の前のセブンイレブンが“最寄りの職場”っていう。
しかも最近、そんな連中が逮捕されました。
消費税、億単位でゴッソリ抜き取ってたってぇ話。
こちとら、スーパーで消費税8%か10%かで悩んでんのに、
連中は「ゼロ呼吸・壱ノ型・脱税」だ。
しかも、ニュース見てたら、あんた、中国人カップルって書いてある。
いや、ちょっと待て、国際問題になるぞと。
でもね、そこに警鐘鳴らしてんのも、また中国人だったりするんだ。
「こういうことが続けば、やがて日本人がひどい目に遭う。
本当に迷惑してるのは、マジメに暮らしてる我々中国人だ」って。
いやぁ、まともな人の声ってのは、国籍超えるねぇ。
逆に日本の官僚はどうだって?
国税庁、動かねぇ。ビクともしねぇ。
まるで霞が関の“岩の呼吸”だ。
こうして、オタクたちは泣いてる。
グッズは買えねぇ、チケットも取れねぇ、
挙げ句、転売ヤーの“アクリルの呼吸”で財布の中身まで切られる。
で、私、怒りに震えてSNSで声を上げた。
「転売反対!免税悪用を許すな!」ってな。
そしたら全国のオタクたちが立ち上がった。
「転売禁止署名運動」ってのが始まりましてね、
一時は官邸メールにも届いたって噂。
……でもね、そんなある日、ヤフオク見たら、
「柱展グッズ完全フルコンプセット・10万円」ってのがあって、
評価欄には「素早い発送ありがとうございました!また利用したいです!」……
これ書いた奴、たぶん炭治郎に水の呼吸でブン殴られるぞ。
さぁ、いよいよオチでございます。
展覧会の最終日、私は再び会場へ行きました。
最後にもう一度、純粋な気持ちで、炭治郎たちに会いたかった。
並んでると、隣に若い兄ちゃん。
伊之助のTシャツ着てる。顔には「全集中」って書いてある。
「お、君も転売に怒って来たのかい?」って声かけたら、
「いえ、僕……転売屋の内定者です。
今日は先輩の仕事見学っす。来月から出荷担当なんで。」
……おい、誰か無惨様呼んでこい。そっちが鬼より怖ぇよ。

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